那須ジャーナル

2021.11.30

お米の学校第五回(最終回):お米が食卓に上がるまで

稲の「はぜかけ」が里山の風景に溶け込み、秋の田んぼを見ると、なんだか懐かしい気持ちになる。
集大成となる「お米の学校 第五回」は、収穫後のお米がテーマだ。さまざまな工程を経て食卓に上がる、まさに「お米の一生」のフィナーレを見届ける回になる。

■収穫後の稲はどうなる?知っているようで知らない収穫後のお米の話
今回は乾燥させた米を、脱穀・籾摺り・精米し、食卓へ流通するための準備を行う。しかも、精米したてのお米は羽釜で炊き、みんなで食するというから楽しみだ。

「まずは脱穀」ということで、田んぼの傍らには、「昔の道具」として、資料館などに展示がある木製の脱穀機がスタンバイ。近くの農家に眠っていたものを譲り受けたというが、失礼ながら「大丈夫?(動くの?)」とちょっと疑いのまなざしを向けてしまう。タイミングよくペダルを踏み込むと、凹凸のついたドラムが回転。そこに稲穂を当てることで茎から米粒が離れる仕組みだという。

脱穀

ペダルを踏みドラムを回す係と、稲穂を押し付け脱穀する係、2名体制で挑戦することに。「足ふみミシンの要領でリズムよく」というが、なかなか難しく、稲は衝撃でそのまま持っていかれそうになる。うまく動きが噛み合ったときに、音を立てて米が離れ飛んでいく様は、傍でみていても興味深い。

「今は電動化されているけれど原理は同じなんだなあ。実は僕も手動の脱穀機は使ったことがなくて。後でやってみたいなあ。」と、お米の学校を監修・見守ってきた、稲作本店(farm1739)の井上敬二朗さんはいう。スタッフのこだわりで、農家である井上夫妻も「初めての経験」が、お米の学校では多かった。チャレンジを一緒に楽しんで進める中で、互いの絆もさらに深まったように感じる。

■籾摺りの作業は、スタッフ考案の身近な道具で
次に出てきたのは「アルミ製のざる」と「木のボール」。籾摺りは、身近な道具を用いて行うようだ。

籾摺り

ざるに脱穀した米を入れ、木のボールで穴にこすりつけるように擦ることで、摩擦で「もみ」をとるのだという。もみがむけた米は、穴からスルッと下のボールに落ちるシステムだ。米がちょうど通れる絶妙な穴のザルがよくあったなあと思っていたら、「この穴にたどり着くまで、かなり試行錯誤をしました」と、お米の学校の立ち上げ担当の林さんは語る。続く精米は家庭用の小さな精米機で行うことに。作業の合間には、お米の学校恒例の「学べるクイズ」も主題された。

クイズの時間

「お米が美味しく食べられるタイミングは?」の問いの答えは「精米した直後のお米」なのだが、見渡せば正解者の多くはお母さん。精米をすると酸化が始まるので、早めに食べるのがいいそうだ。

お米の中に時折混じる黒い点は、カメムシの仕業ということも、クイズで知るところとなった。井上さんによると、無農薬栽培の農家では、LEDセンサーで米の色を識別、不良品をはじく作業を行ってから出荷するという。今や農業にも様々なIT技術が使われていることに感心する。

■精米したての米を羽釜で炊いて……「いただきます」
精米ができたら、羽釜での炊飯に取り掛かる。第三回の時は着火せずに苦労したが、今回は驚くほどスムーズ。聞けば「薪がしっかり乾燥していることが大事」なのだという。

ほどなくして、あちらこちらで蓋を開けては歓声があがる。いい匂いとともに湯気が立ち込める光景に、お腹の虫が、「ぐう~」と大きく鳴った。

炊飯
炊き立てごはん

斯くして那須の名産「たまり漬け」をお供に、田んぼを見ながらの試食タイム。美味しそうにごはんを頬張る様子を、スタッフも笑顔で見守る。結構な量の米を炊いたが、羽釜はすべて空っぽ。完食だ。

****
春の種まきから始まったお米の学校2021も今回がフィナーレ。振り返り思い出されるのは一生懸命な子どもたち、そして参加者の笑顔だ。自宅の食卓を囲みながら、お米の学校のことも思い出してくれているだろう。

私自身も、すくすくと成長する稲や四季折々の田んぼの景色など、変わらぬ自然の営みに幾度となく元気をもらった。未来へ美しい田園風景を残し、美味しいお米を届けられるように。お米の学校は、「自分たちに何ができるか?」を考えるきっかけとなったに違いない。

那須岳と稲穂

文:村田 和子