那須ジャーナル

2021.05.24

お米の学校第一回:お米の一生の始まりを体験

お米の学校がいよいよ開校する。那須は4月半ばというのに、早朝には田んぼに薄氷が張るほど冷えこんだ。太陽が昇るにつれて温かな日差しが降り注ぎ、やがて爽やかな青空に。那須岳も姿を現し、水が張られた田んぼに姿を映すのが美しい。まさにお米の学校のスタートにふさわしい日和に、参加者の顔もほころぶ。

■お米の一生の始まり。お米の種は何?

お米クイズ

舞台となる田んぼの傍らで、お米の一生や取り巻く環境について、青空教室が始まった。「お茶碗一杯分のお米を育てるのに、どれだけの種が必要か?」「日本人が一年に食べるお米の量は?」クイズを交えながら学んでいくが、なかでも基本でありながら最大の疑問は「お米の種は何か?」ということだ。

「お米の一生」といわれると、その始まりとして、多くの人が田植えのシーンを思い浮かべるに違いない。田んぼに植えられる「苗」に成長するまでに、どんなヒストリーがあるのか……複数の種のサンプルを見ながら、さまざまに意見が飛び交う。

お米の種

実はお米の種は、お米なのだという。「もみ」の状態のお米を蒔いて苗まで育て、初めて田植えができるそう。そんなことから、第一回は「お米の種まき」がテーマだ。田植えや稲刈りの機械化が進み、種まきも規格にあうように機械で行うのが一般的だ。ただし今回は「できるだけ自分たちの手で」というこだわりから手蒔きに挑戦をするという。現役の農家でも、手蒔きの経験がある人は少なく、協力をいただいている稲作本店(farm1739)の井上夫妻でさえ「やったことがない。どうなるかは未知数」とのこと。経験がある農家を探し出し、レクチャーを受けるところから始めたといい、新しいことも前向きに楽しみながら開拓するスタッフの姿に、星野リゾートの強さを感じる。

■米作りの始まり「種まき」を体験

お米の種まき

ビニールハウス「アグリガーデン」に場所を移し、いよいよ種まきへ。今日の作業は、
① パレットに土を一定の深さでならし、たっぷりと水をやる
② そこに種となる米(もみ)を蒔き、土を均一になるようにかぶせる
というもの。しばらくは遮光し、タイミングを見て日光を当てると、2週間後には田植えで見かける苗の姿に成長するという。

パレットが配られ作業が始まると、子供も大人も黙々と没頭する。「種は水につけて発芽させている」と聞き、ルーペで小さな芽を探す子供たちの姿は真剣そのもの。決められた量の種を蒔いたはずなのに、パレット一面が種で覆われ密な状態になり驚くことも。「蒔く」というより、「敷き詰める」という方が実際のイメージには近く、これでいいとわかり、ほっとする。「わずか4粒の種が、茶碗一杯分の米を育てる」と学んだばかり。このパレットからどれくらいのお米が育つのかを想像すると、責任の重さに気合がはいる。

ちなみに種になる米(もみ)は、専用の農家があり「そこで購入しないと、収穫したお米を流通にのせることはできない(井上さん)」のだとか。お米の銘柄や産地をしっかり管理するために、種から素性を明らかにする仕組みに感心する。

■田んぼの傍らで小休憩。自然の営みに元気をもらう

パレットへ種まき

種を蒔き終わったパレットが積み上がっていく様は壮観! 達成感を味わい、土と向き合い気持ちがスッキリとしたのも相まって、いい気分だ。次回の田植えも参加するという少女は、自分が種まきをしたパレットに目印をつけ、「ここで育った苗で田植えをするのが楽しみ」と満面の笑みだ。

お米の学校 第一回
田んぼのつくしんぼう

作業を終えたら農家にならい、田んぼの傍らで、おやつと飲み物で小休憩。田んぼには、カエルの声が響きわたり、腰を下ろすとタンポポやつくしなど、春の植物が目に入る。愛おしく感じるとともに、確かな営みを続ける自然の姿に元気をたくさんもらった。
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第二回のお米の学校は、ゴールデンウィークに「田植え」を開催予定。今日の種が立派な苗へと成長しますように。

文:村田 和子