那須ジャーナル

2021.04.27

未来を創る!~ゲストスピーカー井上夫妻@稲作本店 の素顔

お米の学校2021の開催に先立ち、ゲストスピーカーである井上敬二朗さん・真梨子さん夫妻のもとを訪れた。稲作本店(farm1739)の事務所に入ると「米を作るな。未来を創れ!」の張り紙が目に入る。
「大事なことは精米機の前に貼って、常に目に入るようにしています」と敬二朗さん。見れば、たくさんのスローガンが掲げられている。出会って間もないが、温和な雰囲気のふたりの中に、熱い思いを感じた。

■稲作本店:井上敬二朗さん・真梨子さんのストーリー

真梨子さんの実家である米農家を継ぎ、4年目を迎える井上夫妻。その出会いは、当時務めていた大手監査法人で、ふたりとも会社員としてのキャリアも長いのだ。
そんな夫妻が農業に従事して感じたのは「素晴らしい風景の中で、毎日自然と触れ合えて、都会でデスクワークをしているよりもずっと面白いし、魅力的。ある意味ではとても豊かだ。」ということ。そしてもう一つ。
「日本の農家、特に米農家のおかれた現状は厳しい。端的にいうと儲からない。近い将来、継ぐ者も途絶え、美味しい米を食卓に届けることは難しくなる。」という危機感だった。
農家の努力ではどうしようもない、国の農業政策など様々な問題が介在しているという。

■「米を作るな。未来を創れ!」×お米の学校2021
「今は米粒だけが価値になっている。だが田んぼが作る原風景も価値になるし、農業が魅力的な仕事になれば田んぼや日本の農家を守れる。」そう奮起し、ふたりは様々な挑戦を始める。

田んぼの風景

まずは、INAPONという米菓子を製造し、作った米の付加価値を高めて販売することに成功。次に、田んぼに訪れ触れてもらう「開かれた田んぼ」を目指し、クラウドファンディングにチャレンジした。多くの賛同を得て、キッチンカーを利用した田んぼカフェや、閑散期に田んぼでキャンプをする取り組みを準備中だ。

「ただ、僕らに強い思いがあっても、田んぼは基本的に人が訪れようと思う場所ではないのが難しい。」と敬二朗さん。消費者に身近なホテルで、農業のリアルに触れる「お米の学校」は、自分たちが大切にしている思いを知ってもらい活動を広げるチャンスにもなるという。

小さなころから田んぼに触れてきた真梨子さんは「田んぼは、生態系を維持し、河川の氾濫防止などにも役立っていることを伝えたい。」という。
環境と田んぼの関わりを知れば、「日々何を食べるかという選択が、子どもたちの生きる未来の姿を左右する」ということに、気付くはずだと。

■自然との関わりを理解し、自分にできることを発見する
「農業は、やりがいを感じにくい作業が多い。草刈りは必要だが、心的な報酬はない。それが、田んぼに訪れてくれる人ができると、綺麗にすることに意味が生まれる。人を迎えることが、日々の作業のやりがいを向上させる。もっと農業が魅了的な仕事になる。」そんな敬二朗さんの言葉が印象的だった。

井上夫妻の話をきいていると、自分の日常と自然とのつながりを意識し、未来のために「何ができるか」が次々と頭に浮かぶ。
コロナ禍になり、「どう生きるか?」「何を自分の軸にするか?」を見直す機会を持つ人も多いことだろう。そんな人へのヒントも、きっとお米の学校にはあるに違いない。

まもなく開校

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井上夫妻のゲストスピーカー予定日
第1回4月15日、第3回8月10日、第5回10月21日

文:村田 和子