5月の田植えから3か月が経過。久しぶりにリゾナーレ那須へ訪れると、成長した稲は緑色のじゅうたんのよう。風にたなびく姿が美しい。
お米の学校第三回は、「夏の田んぼ」が舞台。稲の成長や生き物を観察し、薪での炊飯にも挑戦するという。夏休みとあって参加者は全員家族連れで、賑やかだ。
■目の前に広がる「田んぼ」のストーリー
青空の下、まずは今までの歩みを、クイズを交えながらシェアする。「お米の種まき」「手での田植え」「日々のメンテナンス」など、ストーリーを知ることで、目の前に広がる田んぼがぐっと身近になる。
「雑草との戦いは、がんばっているのですが押され気味です」と、スタッフの小鷹さんからは、ちょっと残念な報告も。遠目には気づかなかったけれど、横から田んぼを眺めると、稲よりも背が高いすらっとした草……雑穀の「ヒエ」が所々にみてとれる。お米の成長を阻むので除去が必要だが、成長が早く間に合わないのだという。リゾナーレ那須の米づくりは無農薬のため、他にも雑草が多くなる。さらに手植えをした田んぼは、機械を入れることができず、雑草も手で除去するという。収穫までに、大変な手間がかかることを実感する。
■大人も童心に帰って楽しむ「田んぼ」の魅力
今回は、稲作本店 井上夫妻もゲストで参加し、一緒に田んぼの観察へ。
珍しい稲の花が咲いているとのことで探していると、「あったー」という子どもたちの声がこだまする。稲穂の原形のような、まだ固い部分にやっと見つけた白い花の小さなこと! 開花期間が短く、あまり見かけることがない貴重なものだという。花はやがて実(米)になり、稲穂がたわわに実る秋の田んぼの風景へとつながっていく。
* お米の花は花びらがなく、白く見える部分は「雄しべ」なのだそう
虫取り網も用意され、生き物の観察にもチャレンジ。収穫に備え水が抜かれた田んぼには、カエルやバッタ)、トンボもシオカラトンボやオニヤンマなどが生息する。近くの森から遊びにきたのか、クワガタを捕らえた家族も。虫の発見は楽しいけれど、触るのは苦手だと遠巻きに見ている子もいる中、目を輝かせるお父さんの姿が印象的だ。
那須で子育て中の井上夫妻は、そんな様子に「うちの子は、虫を見つけたら前のめりで喜んで捕まえる。怖いという感想は意外だった」と語る。都会では、それだけ自然との接点が少なくなっているのだろう。
■羽釜でご飯に挑戦。お小時飯(おこじはん)の気になるメニューは?
後半は、羽釜でお米を炊く練習。まずは火おこしから。油分の多い杉の葉っぱにマッチで点火し、小さな薪、さらに大きな薪へと、だんだんと火を移し火力を安定させる。やってみると想像以上に難しい。火を絶やさないように「火吹き棒」で酸素を送る役目は、子どもたちが率先して担当。根気よくがんばる姿が頼もしい。
お米の学校でお馴染みとなった農家の休息「お小時飯(おこじはん)」のお供は、自分で炊いたご飯と、リゾナーレ那須の畑で採れた野菜のお漬物。やり遂げた達成感を胸に、那須岳や田んぼの風景を眺めながらいただくご飯は、格別の味わいに違いない。
■帰ってからも繰り返し思い出す「お米の学校」
休憩を終え、生き物を逃がすときには、怖がっていた子どもも近くで虫を観察。成長した様子を垣間見て、スタッフも思わず笑顔になる。
コロナ禍で、子どもたちが新たなことに出会う機会が減っている。お米の学校での体験は、食卓を囲むたびに思い出す「かけがえのない夏の思い出」として心に刻まれたことだろう。
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これから稲刈りまでは、お米にとって「縦・横・厚み」の順で粒を大きくする大切な時期。農家では、台風などの天候リスクに警戒が続くという。
次回のお米の学校(10月1日~7日開催)は、稲刈りと、それを田んぼで干す「はぜかけ」を体験するプログラムだ。たくさんの子どもたちが元気いっぱいに収穫の秋を体感できるように、天候やコロナが落ちつくことを願わずにいられない。
文:村田 和子